イタリア南部、バジリカ−タ州にあるマテーラ。グラヴィーナ峡谷の斜面に出来た天然の洞窟などを利用して新石器時代から生活が営まれてきた世界で最も古い町の一つと言われ、枯れ色の洞窟住居が密集する様子は見るものを一瞬にして虜にする不思議な魅力を持っています。旧市街には凝灰岩を掘って作られた「サッシ」と呼ばれる洞窟住居が密集しています。旧市街はサッソ・バリサーノ、サッソ・カヴェオーソ地区に別れ、カヴェオーソ地区には、より根源的な洞窟住居が残されています。
マテーラの大地を覆う凝灰岩を加工して作った工芸品を販売するお店。店内に入ると目に飛び込んでくるのが凝灰岩で造られたサッシ地区の巨大な模型。お店のオーナー、エウスタキオ・リッツィさんが3年を掛けて作り上げたもので、細部まで精巧に造られた模型を見ていると住んでいる人の声が今にも聞こえてきそうな感覚に陥ります。
旧市街、サッシ地区には数多くの洞窟教会が存在しています。8世紀頃、イスラム教の迫害から逃れてきたキリスト教の修道士たちがグラヴィーナ峡谷を挟んだ向いにあるムルジャの高台にある自然の洞窟を住居とし、自らの祈りの場としたのが始まりだと言われています。
サッソ・カヴェオーソ地区に建つマドンナ・デ・イドリス教会。岩山そのものが教会になった光景は数ある洞窟教会の中でも群を抜く存在感で見る者を圧倒します。中には小さな祭壇があり、昔は壁一面フレスコ画で覆われていたといいます。また教会の中には、廊下で繋がった別の教会、サン・ジョバンニ・イン・モンテッローネもあります。
「カーサ・グロッタ・ディ・ビコ・ソリタリオ」は1956年まで農民が暮らしていた洞窟住居で現在は中を見学する事ができます。室内にはベッドや物置、調理道具など様々な生活用具が当時のまま保存されています。驚くのは人の居住スペースの奥に家畜用のスペースがある事。家畜と同じ空間に人々が暮らしていたのは、寒さが厳しいマテーラで大切な家畜を守るため、そして暖をとるための生きる知恵だったのです。その他にも床の湿気からわら敷のマットを守る為、ベッドの床は高くとられ、空いた空間は物置や鶏を飼育する場所として使われていたと言います。ここに暮らしていた農民達の生活が垣間みられる貴重な場所です。
元々複数の洞窟住居だった場所を改装した「ホテル サンタンジェロ」。その為、全ての部屋の間取りは異なり、入り口もそれぞれ独立した作りになっています。宿泊した64号室は凝灰岩の壁が剥き出しになった洞窟のような空間。配されたアンティーク家具が当時の面影を残しています。
幸運のシンボル、鶏をモチーフにしたマテーラの伝統的なお守り「ククー」。小さなものは赤ちゃんへ幸運のお守りとして、大きなものは婚約の際に愛の証として男性から女性に渡されたと言います。現在も結婚式の時、新郎新婦への贈り物として利用されています。この地で生まれ育ったマリアさんの手から生まれるククーは、伝統的なスタイルに新たな感性を吹き込んだ魅力ある作品になっています。
新市街のイストリア通りにある1947年創業の老舗パン屋さん「パニフィーチョ・チファレッリ」。 マテーラで1000年以上も前から食べられている伝統的なパン。その特徴はパスタに使うデュラムセモリナ粉を使う事。あとは天然酵母と塩と水のみ。創業当時から使われる薪釜で約2時間かけ焼きあげたパンは、香ばしい皮ともちっとした食感、ほんのりとした塩味が効いた素朴な味わい。1日に600個が売り切れる大人気のマテーラパン。地元の人には欠かせない庶民の味です。
新市街のパスコリ広場にある鶏のマークが目印の「テッレ・ディ・ルカーニア」。バジリカ−タ州の州都、ポテンツァやマテーラで作られたワインをはじめ、エキストラバージンオリーブオイル、チーズ、ジャム、パンなど約100種類の地元の幸が並んでいます。